この本の読み方
はじめに、この本の立ち位置をお話しさせてください。
この本は、「この通りにやりなさい」という教科書ではありません。プログラマーではない元教員のヒトリキカクが、AIと一緒にWebサイトや本やアプリを作ってきた記録です。ヒトリキカクでもできた。では、あなたならどうするか。それを考えるための材料として読んでください。
各章には、ヒトリキカクがやったこと(黄色の囲み)と、あなた自身のやり方を考えるための問い(緑の囲み「あなたなら、どうする?」)を置いています。頼み方の例も、そのまま使うより、自分のことばに書きかえて使ってほしいと思っています。
AIを、何のために使うか
AIの使い方として、よく聞くのは、話し相手として考えを整理する、書類やプレゼン資料を作る、といったものです。どれも便利です。けれど、この本が考えたいのは、もう一歩先です。
AIを、自分の作品を作って、世に出すための道具にする。伝えたいことをWebサイトにする。知っていることを本にする。あったらいいなと思う場所を、アプリにする。AIは、ひとりの人が「発信する」「創作する」ための道具にもなります。
コードを書けなくても、作れるようになった
少し前まで、Webサイトやアプリを作るには、プログラミングの言葉を覚える必要がありました。教科書を買い、文法を覚え、エラーと格闘する。そこで多くの人が挫折してきました。
いまは違います。作りたいものを日本語で伝えると、AIがプログラムを書いてくれます。書いたものを動かして見せてくれて、「ここをこう直して」と言えば直してくれます。
ただし、「AIに頼めば全部できる」わけではありません。AIは、何を作るべきかを知りません。できあがったものが良いかどうかも、最後に決めるのはあなたです。
3つの役割で考える
AIと作るときの仕事は、大きく3つに分けられます。
見ての通り、3つのうち2つはあなたの仕事です。プログラムが書けるかどうかより、「何を作りたいか」をはっきり言えることと、「できたものを自分の目で確かめること」のほうが、ずっと大事になります。
これは、教える仕事や、ものを企画する仕事をしてきた人なら、すでに持っている力です。プログラミング経験がゼロでも、まったく不利ではありません。
ヒトリキカクの場合
小学生のころ、私の家にはファミコンではなく、MSXというパソコンがありました。雑誌に載っているプログラムを、1行ずつ打ちこんで動かしていました。教員になってからは、Excelのマクロを学びました。2か月間、現場を離れて参加した研修ではHTMLを学び、その後に勤めた学校では、学校のWebサイトを作る担当にもなりました。
それでも、プログラミングを自分の道具にすることはできず、一度は挫折したと思っています。いま公開しているサイトもアプリも、コードの多くはAIが書きました。私がやったのは、「こういう自習室にしたい」と決めることと、できたものを毎回自分の目で見て「ここが違う」と伝えることでした。
雑誌を見ながら1行ずつ打ちこんでいたころと、日本語で伝えれば形になるいま。道具は変わりましたが、「作ってみたい」という気持ちは、あのころから変わっていません。
コードは読めなくてもいい?
全部を読めるようになる必要はない、とヒトリキカクは考えています。そのかわり、AIが何をしたのかは、毎回聞くようにしてきました。AIは、聞けば何度でも、わかることばで説明してくれます。
頼み方の例
これを続けていると、ファイルの名前や、よく出てくることばが少しずつわかってきました。読めるようになるのは、作りながらで十分だったと感じています。
たとえば:最初の1ページ
AIと作る流れを、1枚のWebページを例に見てみます。道具の準備(Claude Codeの入れ方)は第2章で扱います。ここでは、流れの感じをつかんでもらえれば十分です。
1. 何を作るかを決める
最初は、小さく、自分のことから。ここでは自己紹介のページを例にします。名前、好きなこと、最近やっていること。あなたなら、最初の1ページに何を載せますか。
2. AIに頼む
頼み方の例
ポイントは、中身を箇条書きで渡すことです。「いい感じの自己紹介ページを作って」でも作ってはくれますが、書いてほしいことはAIにはわかりません。
3. 開いて確かめる
AIがファイルを作ると、フォルダに index.html ができます。HTMLは、Webページを書くための形式です。このファイルをブラウザ(ChromeやEdgeなど)で開くと、ページとして表示されます。
開いたら、声に出すつもりで見ていきます。文字は読みやすいか。色は思った通りか。スマホの幅で見ても崩れていないか。
4. ことばで直す
頼み方の例
直してもらったら、もう一度開いて確かめます。頼む → 開く → 確かめる。この往復が、AIと作るときの基本のリズムです。ヒトリキカクの場合、サイトでも、PDFでも、アプリでも、最後までこれは変わりませんでした。
つまずきやすいところ
- 一度に全部頼む。大きく頼むと、どこが思い通りでないのか、わからなくなります。1回に1つか2つずつ。
- 「いい感じに」で頼む。あなたの「いい感じ」はAIにはわかりません。色、大きさ、入れることばを具体的に。
- 確かめずに次へ進む。開いて見ないまま頼み続けると、あとで直す場所がわからなくなります。
あなたなら、どうする?
- あなたが「作って、世に出してみたい」ものは何ですか。小さなものでかまいません。
- 「決める」と「確かめる」。あなたが得意なのはどちらですか。
- これまでの仕事や暮らしの中で、あなたがすでに「作ってきた」ものは何ですか。
ヒトリキカクが大事にしたこと
正解ではなく、ひとつの例です。あなたのやり方と、くらべてみてください。
- AIと作るときの仕事は「決める・書く・確かめる」。そのうち2つはあなたの仕事
- コードは全部読めなくていい。AIが何をしたかは、毎回聞く
- 頼むときは、中身を箇条書きで具体的に
- 「頼む → 開く → 確かめる」をくり返す
次の章では、このやりとりをするための道具を、ヒトリキカクがどうそろえたかを見ていきます。