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PART 5 ・ 第13章

AIとの付き合い方

2026年11月時点の情報です
この章で考えること
  • AIと、どんな関係で作り続けたいか
  • AIに任せたくないことは何か
  • 次に、何を作ってみたいか

ここまで来たあなたへ

Webサイトを作り、公開し、本を売り出し、アプリをApp Storeに出す。この本でたどってきた道は、少し前なら、プログラミングを何年も学んだ人にしか歩けない道でした。

AIのおかげで、その道は開かれました。けれど、AIは魔法の杖ではありません。まちがえるし、忘れるし、頼まれていないことまでしてしまうことがあります。長く一緒に作っていくには、その性質を知って、うまく付き合う必要があります。

最後の章では、実際に起きた失敗と、そこから生まれたコツをまとめます。

失敗の記録

「今日の分だけでいいのです」

noteの連載の記事を、AIに下書きしてもらったときのことです。その日の出来事だけを書いてほしかったのに、AIは、それまでの経緯を全部まとめた長い記事を書いてきました。すぐに「今日の分だけでいいのです」と伝えて、書き直してもらいました。

わかったこと:AIは、親切のつもりで「多め」に作ります。何を入れて、何を入れないかは、はっきり言う必要があります。そして、一度伝えた決まりは、メモに残しておくと、次からまちがえません。

AIのまとめが、まちがっていた

AIとのやりとりが長くなると、それまでの話は自動で短くまとめられます。あるとき、そのまとめに「連載の第1回はまだ書いていない」とありました。実際には、何日も前に書き終えていました。

わかったこと:AIのまとめや報告は、まちがうことがあります。大事なことは、まとめを信じこまず、実際のファイルや記録で確かめます。

置いておいたはずの資料が、消えていた

手帳を作ったときの資料一式を、ダウンロードのフォルダに置いたままにしていました。あとで続きを作ろうとしたら、そのフォルダから資料が消えていました。前のやりとりをさかのぼって、なんとか取り直すことができました。

わかったこと:作品の資料は、作業用のフォルダにまとめて置きます。「とりあえず」の場所に置いたものは、いつかなくなります。

直したのに、変わって見えない

サイトの見た目を直したのに、何度見ても前のままでした。ブラウザが、前の見た目のファイルを覚えていたためです。見た目のファイルを読みこむところに、版の番号をつけて、直すたびに番号を上げるしくみにしました。

わかったこと:「直した」と「見る人に届いた」は別のことです。最後は、見る人と同じ条件で確かめます。

ヒトリキカクが大事にしている6つのこと

1. 決めるのは、いつも自分

AIは案を出してくれます。おすすめも教えてくれます。けれど、何を作るか、何を載せるか、何を消すかを決めるのは、あなたです。AIが決めたように見えても、それを選んだのはあなただと、ヒトリキカクは思っています。作品に名前を出すのは、あなたなのですから。

2. 確かめてから、次へ

「できました」「直しました」と言われても、自分の目で見るまでは、できたことにしません。第1章からくり返してきた「頼む → 開く → 確かめる」は、最後まで変わりません。

3. 記録を残してもらう

AIは、日をまたぐと、前のやりとりを覚えていないことがあります。だから、大事なことはファイルに残してもらいます。

頼み方の例

今日決めたことと、その理由を、次に作業するときに読めるようにメモに残してください。 まだ決まっていないことも、別に書いておいてください。

4. 話題ごとに、やりとりを分ける

ひとつのやりとりで、サイトのこと、アプリのこと、文章のことを全部話していると、AIが混乱しやすくなります。話題が変わったら、新しいやりとりを始めます。そのとき、前のやりとりで決まったことをメモに残してから移ると、続きから始められます。

5. 消す前に、もどせる形に

ファイルを消す、大きく作りかえる。そういうときは、先に「もどせる形」を作ってもらいます。前の状態を別の場所に残しておく、変更の履歴をとっておく、など。

頼み方の例

このフォルダを大きく作りかえたいです。 始める前に、いまの状態にもどせるようにしておいてください。 どうやってもどすのかも教えてください。

6. AIに推測させない

アプリのURL、商品のページ、人の名前や数字。AIは、知らないことでも、それらしく書いてしまうことがあります。事実は、あなたが渡します。渡したものは、AIに実際に開いて確かめてもらいます。

AIに渡さないもの

  • パスワード、確認コード、口座の番号、秘密の鍵
  • 公開してはいけない、ほかの人の個人情報
  • 自分が載せたくない情報(住所など)。うっかり書かれないよう、メモに「書かない」と残しておくと安心です

ヒトリキカクの場合

私はClaudeを、ヒトリキカクの「ただ一人の従業員で、相棒」だと思っています。私が店主で、何を作るかを決める。相棒が案を出し、形にし、私が確かめる。そのくり返しで、Webサイトも、本も、アプリも作ってきました。

相棒には、メモを残してもらっています。サイトの決まりごと、作品ごとの経緯、私が過去に「それは違う」と言ったこと。おかげで、日をまたいでも、話題を分けても、続きから作れます。この本も、その相棒と一緒に書きました。

あなたなら、どうする?

  1. あなたにとって、AIは何ですか。道具、助手、相棒、それともほかのことばですか。
  2. どんなに便利になっても、AIに任せたくないことは何ですか。
  3. この本を読み終えて、次に作ってみたいものは何ですか。

ヒトリキカクが大事にしたこと

正解ではなく、ひとつの例です。あなたのやり方と、くらべてみてください。

おわりに

小学生のころ、MSXの前に座って、雑誌のプログラムを1行ずつ打ちこんでいました。打ちまちがえれば動かない。動けば、それだけでうれしい。あれから何十年もたって、いまは日本語で伝えれば、AIが形にしてくれます。

この本は、プログラミングに一度挫折した人間が、AIと一緒に作ってきた記録です。うまくいったことより、つまずいたことのほうが多かったかもしれません。それでも、作品は少しずつ増えていきました。

ここに書いたのは、ヒトリキカクのやり方です。正解ではありません。あなたには、あなたの作りたいものがあり、あなたに合った進め方があるはずです。ヒトリキカクでもできた。だから、あなたもきっとできる。この本が、あなたが自分のやり方を見つけるための、きっかけになればうれしいです。

小さくてかまいません。1ページの自己紹介からでかまいません。まず、ひとつ作って、世に出してみてください。

AIの道具は、これからも変わり続けます。この本も、それに合わせて書き直していきます。