02 / 生徒指導

生徒指導

日々の生活指導や服装・頭髪指導から、不登校・いじめへの対応、児童生徒のメンタルヘルスまで。生徒指導が扱う範囲は年々広がり続けています。

02 / 生徒指導

生活指導・服装頭髪指導から、不登校・いじめへの対応まで

生徒指導は、日々の生活指導や服装・頭髪指導といった基本的な関わりから、不登校やいじめ、児童生徒のメンタルヘルスへの対応まで、非常に幅の広い仕事です。近年はこの領域全体で、対応を要するケースそのものが増え続けています。

35万3,970人 小中学校の不登校児童生徒数(2024年度)。12年連続の増加で過去最多。高校を含めた小中高計では42万1,752人。
76万9,022件 いじめの認知件数(2024年度、小中高・特別支援学校計)。4年連続で過去最多を更新。うち76.1%が年度末までに解消。
1,405件 心身に重大な被害が疑われる「いじめ重大事態」の件数(2024年度)。これも過去最多。
12万8,859件 小中高での暴力行為発生件数(2024年度)。前年度から大きく増加し、過去最多を更新。

出典:文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2025年10月公表)

文部科学省はこうした状況について、不登校の増加は「子どもの休養の必要性についての理解が広がったこと」や、コロナ禍を経て「無理に登校しなくてもよい」という意識の変化が影響した可能性があると説明する一方、いじめや暴力行為の増加も含め、「極めて憂慮すべき状況が続いている」という受け止めを示しています。いじめの認知件数の増加については、積極的な認知への理解が進んだことに加え、1人1台端末を使った心身の健康観察が早期発見につながっている面もあると分析されています。

「生徒指導提要」が示す、指導から支援への転換

生徒指導そのものの考え方も、この10年余りで大きく更新されています。文部科学省は2022年12月、生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書「生徒指導提要」を、2010年の初版公表以来12年ぶりに全面改訂しました。いじめ防止対策推進法の成立や、こども基本法の制定など、生徒指導を取り巻く法制度が大きく変化したことを踏まえた改訂です。

改訂版で強調されているのは、生徒指導を大人が主導する「管理」としてではなく、児童生徒一人ひとりの権利を尊重しながら支える営みとして捉え直すという方針です。具体的な枠組みとして示されたのが「2軸3類4層構造」と呼ばれる考え方で、問題が起きてから対応する事後対応型(リアクティブ)だけでなく、日常的な人間関係づくりを通じて課題を未然に防ぐ、常態的・先行的(プロアクティブ)な指導に重点を置く姿勢が打ち出されています。

生徒指導の重層的支援構造(4層)― 生徒指導提要(2022年12月改訂)
層名称対象
第1層発達支持的生徒指導すべての児童生徒
第2層課題予防的生徒指導:課題未然防止教育すべての児童生徒
第3層課題予防的生徒指導:課題早期発見対応課題の予兆がある一部の児童生徒
第4層困難課題対応的生徒指導深刻な課題を抱える特定の児童生徒

出典:文部科学省「生徒指導提要」(令和4年12月改訂版)第1章1.2「生徒指導の構造」

この構造が示しているのは、生徒指導の重心を、問題が起きた後の第4層(困難課題対応)だけに置くのではなく、全員を対象とした第1層・第2層の「日常的な指導・支援」に置き直すという発想です。保護者対応や教職員のメンタルヘルスのページで見てきたような、教員個人の経験や勘に頼った事後対応中心のあり方から、学校全体で日常的な関係づくりに取り組む組織的な体制への移行が、この改訂の柱の一つになっています。

服装・頭髪指導と校則の見直し

服装や頭髪に関する指導、いわゆる「校則」をめぐる対応も、生徒指導の一部として教員が日々担ってきた業務です。近年は、社会通念や生徒の人権の観点から必要性が乏しいとされる、いわゆる「ブラック校則」の見直しに取り組む教育委員会や学校が増えています。校則の意義を児童生徒自身が話し合いながら見直していく取り組みも各地で進められており、指導のあり方そのものが変化の途上にあります。

増え続ける背景には、複数の要因が重なっている

不登校の要因は一つに絞れるものではなく、学校生活そのものへのなじみにくさ、友人関係や教員との関係、家庭の状況、そして本人の心身の状態など、複数の要因が組み合わさって生じるケースがほとんどです。近年は「学校に無理に行かなくてもよい」という社会的な理解が広がったことで、これまで我慢して登校していた児童生徒や保護者が、不登校という選択を取りやすくなった面もあります。数字の増加を、学校が悪化したことの証拠とだけ捉えるのではなく、「合わない環境を我慢し続けなくてよい」という価値観の変化として捉える見方もあります。この点は、不登校の増加と並行して通信制高校や学びの多様化学校といった選択肢が広がっていることとも関係しています。

コロナ禍が変えた「休むこと」への意識

不登校が12年連続で増え続けている背景の一つとして、文部科学省自身が繰り返し指摘しているのが、新型コロナウイルス流行下での一斉休校や分散登校を経て、「体調が少しでも優れなければ、無理をしてまで登校しなくてよい」という意識が、児童生徒・保護者・学校の間に広く浸透したことです。感染対策としての出席停止や在宅学習が「異常な例外」ではなく「選べる普通の選択肢」として社会に根づいたことは、学校を休むことへの心理的なハードルそのものを下げたと考えられます。これは、社会全体でリモートワークが浸透し、体調が優れないときに出社せず在宅で仕事を続けるという働き方が一般化したことと、根っこの部分で重なる変化だと捉えることもできます。

興味深いのは、コロナ禍を実際には経験していない世代でも、不登校の増加傾向が続いている点です。2023年度に小学1年生だった不登校児童は、コロナ禍のさなかにあった2021年度の小学1年生と比較して、約2倍にあたる9,154人に増えています。この学年は、就学前も含めてコロナ禍による学校生活の制限をほとんど経験していません。つまり、コロナ禍という出来事そのものの直接的な影響というより、コロナ禍をきっかけに社会全体に定着した「無理をしなくてよい」という価値観が、世代を超えて受け継がれている可能性がうかがえます。文部科学省の調査でも、不登校の主要因としてもっとも多いのは「いじめ」ではなく「無気力・不安」であり、その割合は年々増加して2023年度には約半数を占めるまでになっています。

学校行事に「参加しない」という選択も

不登校という形だけでなく、ふだんは登校していても、体育祭では走ることに抵抗を感じる、文化祭ではクラスの出し物のステージに立ちたくない、友人関係がうまくいっていないなかで宿泊を伴う修学旅行には行きたくない、といった理由で、特定の学校行事だけを欠席する児童生徒が増えていると、学校現場や教育相談の現場からは報告されています。不登校のような全国統計はまだ整備されていませんが、教育相談の現場からは、行事の準備が本格化する時期に子どもの心身の様子が変化するという相談が季節的に増える傾向があると指摘されています。

水泳授業という一例

学校の水泳授業も、変化が目立つ領域の一つです。ただし主な理由は、老朽化した学校プールの維持管理コスト、猛暑による熱中症のリスク、専門知識を持たない教員が指導にあたる負担といった、施設・運営面の事情にあります。水泳授業を廃止し、近隣の民間スイミングスクールや自治体プールでの授業に切り替える自治体が増えており、水泳指導の経験がない教員の負担が軽くなる利点がある一方、移動時間による授業時間の圧迫や、民間委託に切り替えた学校と従来どおり自校のプールで指導を続けている学校との間で指導内容に差が生じるといった新しい課題も生まれています。生徒側の水着姿への抵抗感が語られることもありますが、水泳授業が縮小している主な動因としては、こうした施設・コスト・安全面の事情の方が大きいとされています。

「本人の意思を尊重する」という価値観の広がり

行事への不参加を、保護者が積極的に後押しするケースが増えているという声も、学校現場からは聞かれます。この背景には、2023年に施行された「こども基本法」が、子どもの意見表明権と、その意見が年齢や発達の程度に応じて尊重されるべきことを基本理念に掲げたことも関係していると考えられます。従来は「わがまま」や「甘え」として片付けられがちだった子どもの「行きたくない」という気持ちを、保護者が正面から受け止め、代弁するようになってきている、という見方もできます。

これは子どもの心身の安全という観点からは前向きな変化である一方、学校現場にとっては新しい調整業務を生んでもいます。行事に参加しない児童生徒への代替の学習課題や居場所の用意、他の保護者への説明、成績評価への影響の判断など、これまで「全員参加」を前提に組み立てられていた行事の運営を、一人ひとりの状況に応じて個別に設計し直す必要が生じています。保護者対応や教科指導の負担増加は、こうした細部の積み重ねからも生じています。

児童生徒のメンタルヘルスという難しい領域

不登校やいじめの背景には、児童生徒自身の心の状態が関わっていることも少なくありません。学校現場では、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとの連携を図りながら対応にあたっていますが、日常的に児童生徒と接する時間が最も長いのは学級担任をはじめとする教員です。専門的なケアが必要な場面と、教員が担うべき範囲の見極めは、現場にとって難しい判断を伴い続けています。

数字の背景にあるもの 2024年度に自ら命を絶った小中高の児童生徒は413人にのぼりました(文部科学省調査、学校が把握した件数)。置かれていた状況として(複数回答、「不明」を除く)「精神障害」「家庭不和」「進路問題」などが多く挙げられています。なお、警察庁の統計に基づく厚生労働省のまとめでは、2025年(暦年)の小中高生の自殺者数は538人で、統計のある1980年以降で最多となりました。調査の期間や対象の取り方が異なるため単純比較はできませんが、どちらの統計も、2020年前後から高止まりが続いているという傾向は共通しています。これは学校だけで防ぎきれる問題ではなく、家庭や地域、医療・福祉との連携を含めた社会全体の課題です。

※ このページでは統計としての事実を扱っています。児童生徒の自殺やメンタルヘルスに関して、ご自身やご家族のことで気になることがある場合は、一人で抱え込まず、学校のスクールカウンセラーや、お住まいの自治体の相談窓口、24時間対応の「よりそいホットライン」(0120-279-338)などにご相談ください。